セレブ御用達「若返りのビタミン」NMNの選び方

粉末サプリメント2. サプリを食事に置換える

欧米セレブリティたちの間で注目を集めてた「若返りのビタミン」、それがNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)です。NMNは、長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)を活性化させる働きがあることで知られ、その効果に多くの人々が関心を寄せています。

NMNは比較的最近知られるようになった成分です。2016年、NMN研究の第一人者である今井先生方によって、60代のマウスが20代の体の機能を維持できたという驚きの論文※1が発表されました。この研究結果は大きなセンセーションを巻き起こし、NMNの存在が広く知られるようになりました。また、日本では2020年にβ-NMNが食品として認可され、健康食品業界全体がNMNの話題で湧きました。

サプリを選ぶなら、どれがいい?

NMNが認可されて数年たった現在は、すでに様々な会社から多数の商品が発売されています。耐酸性カプセルに入れた商品や酵母発酵のNMNを使用した商品など、各社が工夫を凝らしています。また、1日の摂取量も商品によって異なり、125mgから600mgまで幅広いラインナップがあります。そのため、「どのサプリが一番良いのか」という疑問を抱える人も多いでしょう。

そこで、2016年の論文※1からその疑問を紐解いていきましょう。この論文で使用されたのは、オリエンタル酵母社のβ-NMNでした。この実験では、マウスに対して1日100mg/kg、化学合成のNMNを水に溶かしたものを経口摂取させています。

この実験結果からみると、通常のNMNでもきちんと効果が得られることが示されています。耐酸性カプセルは体への吸収性を高めるための工夫でしょうが、必ずしも必要ではないようです。また、酵母発酵のNMNは、化学合成のイメージに対する好みによる選択肢の1つとも考えられます。ただし、純度だけは高いほうがよいようです。

1日に必要な量は?

NMNの1日の必要量については、マウスによる実験の結果※1から推測すると、体重50kgの成人の場合、約400mgの摂取に換算されます。インターネット上では、1日100~300mg程度の摂取を推奨しているところが多いようです。

一方で過剰摂取による副作用の心配も指摘されています。実際、NMNをブロッコリーや枝豆などの食品に換算すると、驚くほどの量になります。慶応義塾大学で行われたヒトへの安全性試験も、1日500mgを4週間のみで、長期で行ったわけではありません。具体的な副作用についてはまだ詳しくわかっていませんが、2022年には米国FDAがサプリメント・食品としての販売を禁止するというニュースも報じられました。

体内でNMNを作る、必須ビタミン

体内でNMNをつくる既存の成分はあります。ニコチンアミド(別名:ビタミンB3、ナイアシン)です。栄養の勉強したことのある方ならご存じかもしれませんね。体に必須の栄養素です。

NMNの働きは下記に示すとおり、まずNMNATという酵素によってNADに変換され、長寿遺伝子(SIRT1)を活性化させます。ニコチンアミドはその前段階に当たり、NAMPTという酵素によってNMNが作られます。

ニコチンアミド
(ビタミンB3、ナイアシン)
     ↓←NAMPT
NMN
     ↓←NMNAT
NAD

SIRT1
長寿遺伝子が活性化されるしくみ

それならニコチンアミドをとればNMNと同じ効果が期待できるのでは?と思うかもしれませんが、年齢を重ねてくると、NMNをつくる酵素のNAMPTが徐々に少なくなってくるそうなのです※2。だからNMNはサプリメントで摂取したほうがいいのですね。

NMNはまだ新しい成分であり、長期的な安全性や適切な摂取量についてのデータが必要です。現在、今井先生は、臨床実験において1日300mgの投与を進めているとのことです。今後の研究結果によって、NMNの適切な摂取量や効果のメカニズムが明らかになることを期待しています。

※1. Cell Metab. 2016 December 13; 24(6) 795–806
※2. 今井眞一郎著「開かれたパンドラの箱」朝日新聞出版、2021年

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